じんせいはしりがき

中田の雑多日記

すれ違い

すれ違い

3月26日

僕は、先週の水曜日の昼間に母に言われ、母の仕事で出た「洗い物」を出しに、このコインランドリーに来た。

最後のお使いだった。

僕は、今晩、この町を出ていく、母の小間使いはもうやめて、どこか眼のつかぬところで生きていこうと思っている。

だけど土曜日に一度だけ、この町に戻ってこようと思ってる。

コインランドリーのコミュニティーノートでお返事をくれた彼に会う為に

はじめは眺めているだけで「なんか文章が書かれてるな」くらいに思っていたがあるとき僕も何か文章を書いたら返ってくるのかなと思い、一筆書いてみた。

そうしたら翌週見たときに土曜日に3行の文章が返ってきた。

はじめに書いたのは夏だったからもう半年程度経つのだろうか

彼は、いつも難しい言葉を使ってお返事を返してくるから、はじめは辞典を持ってきて意味を調べつつ返していた。

最初はカチッとした字の書き方で真面目なんだろうなと思っていたけど、意外とユーモアのある面白い人で、僕が悩みを書くと詩的?な感じで返してきた。

「最近は洗い物をしたくない、いつまでもこんなことをしていたくない、此処も無くなるし、いい機会だとは思うのですが、どうしたら良いでしょうか」

「3/16 傀儡のように言いなりにならず、自分の思うことをやろう!君の生き方を否定するような人間など肥やしにもならないよ。道徳を守ってさえいれば私のような味方が付くさ」

その言葉に背中を押され、家出を決意した。

母の言いつけ、大人の言いつけ…それを押しのけ、初めての僕の決断だ。

いやでもこの決断もよく考えたら「土曜日の彼」という大人に結局、肩を持たれ歩みを進めただけなのだから、あまり本質は変わっていないのかな…

あんまり考えても埒が明かないか

そういえば、あのノートに一度も僕とか書いていなかった気がする…

どんな風だと思われているのだろう…

まぁ、でもそれも今週の土曜日にどんな人かわかるか!

その日を楽しみにこっそりと玄関の扉から僕は飛び立った。